魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
久しぶりにコハクより先に目が覚めたラスは、ぼさぼさ頭で寝ぼけ半分のままむくりと起き上がると、バルコニーに出て大きく伸びをした。
春風はあたたかく、屋上から絶えず金色の花の花弁のシャワーが舞い落ちてくるのでとても良い香りがする。
部屋に戻ってソファに座ったラスは大好きな金色の蜂蜜が入った瓶を脇に抱えて指を突っ込むと、美味しそうに何度も舐めて脚をばたばたさせていた。
「美味しいっ。コー、もう朝だよ。起きないの?もうちょっと寝てる?」
「んーー……」
うつ伏せで上半身裸のまま寝ているコハクから眠たそうな声を出すと、ラスはひとりで淡いピンク色のセーターとふんわりしたクリーム色のスカートを履いてそっと部屋を出た。
目指すはアーシェの作業部屋なのだが…
何故か部屋を出ると、ドアのすぐ脇にはデスが膝を抱えて座り込んでいた。
「デス?どうしてこんなとこに居るの?」
「…………見張ってた……」
「え?何から?じゃあ一緒にアーシェの作業部屋に行こうよ。どうせまた寝てないんだろうなー」
「……」
無言で手を差し伸べていたデスの手を握って2階の角部屋まで一緒に歩く。
城内に居る間は顔も手も隠さずにいてくれるデスを見上げると、少し垂れた瞳とぱっちり視線が合ってぽうっとなった。
最近コハクからよく“この面食いめ!”と言われるのだが…否定できない。
デスの顔は大好きだし、アーシェはコハクにそっくりだし問答無用で大好きな顔だ。
「デスにも早く大好きな人が現れるといいのにね」
「……もう…居る…」
「え!?誰!?」
思わず立ち止まって目を真ん丸にしているラスのぷにぷにの頬を骨だけの指でつんと突いたデスが少しだけはにかんだように見えた。
ラスの緑の瞳はますます大きくなり、デスが無言でラスの手を引いて歩き出すと、ラスはデスの腕に抱き着いてすり寄った。
「ありがとう、私もデスのこと大好きだよ」
「………うん…」
でれでれ、てれてれ。
心がふんわりして長い廊下を歩き、アーシェの作業部屋に着くと――ドアの隙間から光が漏れていた。
「もう!また寝なかったの!?」
ノックもせずにドアを開けると――昨日はただの正方形の石だったものが、大きく形を変えていた。
アーシェは、その前に立っていた。
春風はあたたかく、屋上から絶えず金色の花の花弁のシャワーが舞い落ちてくるのでとても良い香りがする。
部屋に戻ってソファに座ったラスは大好きな金色の蜂蜜が入った瓶を脇に抱えて指を突っ込むと、美味しそうに何度も舐めて脚をばたばたさせていた。
「美味しいっ。コー、もう朝だよ。起きないの?もうちょっと寝てる?」
「んーー……」
うつ伏せで上半身裸のまま寝ているコハクから眠たそうな声を出すと、ラスはひとりで淡いピンク色のセーターとふんわりしたクリーム色のスカートを履いてそっと部屋を出た。
目指すはアーシェの作業部屋なのだが…
何故か部屋を出ると、ドアのすぐ脇にはデスが膝を抱えて座り込んでいた。
「デス?どうしてこんなとこに居るの?」
「…………見張ってた……」
「え?何から?じゃあ一緒にアーシェの作業部屋に行こうよ。どうせまた寝てないんだろうなー」
「……」
無言で手を差し伸べていたデスの手を握って2階の角部屋まで一緒に歩く。
城内に居る間は顔も手も隠さずにいてくれるデスを見上げると、少し垂れた瞳とぱっちり視線が合ってぽうっとなった。
最近コハクからよく“この面食いめ!”と言われるのだが…否定できない。
デスの顔は大好きだし、アーシェはコハクにそっくりだし問答無用で大好きな顔だ。
「デスにも早く大好きな人が現れるといいのにね」
「……もう…居る…」
「え!?誰!?」
思わず立ち止まって目を真ん丸にしているラスのぷにぷにの頬を骨だけの指でつんと突いたデスが少しだけはにかんだように見えた。
ラスの緑の瞳はますます大きくなり、デスが無言でラスの手を引いて歩き出すと、ラスはデスの腕に抱き着いてすり寄った。
「ありがとう、私もデスのこと大好きだよ」
「………うん…」
でれでれ、てれてれ。
心がふんわりして長い廊下を歩き、アーシェの作業部屋に着くと――ドアの隙間から光が漏れていた。
「もう!また寝なかったの!?」
ノックもせずにドアを開けると――昨日はただの正方形の石だったものが、大きく形を変えていた。
アーシェは、その前に立っていた。