魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
まだ粗削りの段階だったが、ラスにはそれが何だかすぐにわかった。
「赤ちゃんを抱っこしてる…女の人…?」
丸いカーブを描き、前かがみになった髪の長い女性。
その両手は抱きしめるようにして、丸い卵を抱きしめていた。
ラスにはその卵が赤ちゃんに見えて、彫像の前に立ったままじっと動かないアーシェの隣に立って同じ景色を共有した。
「アーシェ…これ…素敵…!」
「!ああびっくりした…!いつ部屋に入って来たんだ?」
「え?気付いてなかったの?アーシェ、これ女の人だよね?この卵は赤ちゃんなんだよね?」
「ん、お前とルゥをモデルにした。まだ粗削り段階だから、これからもっと線を削って細くして…お前に近付ける」
ラスが目を見張ってアーシェを見上げた。
本当はラスがモデルであることを明かすつもりはなかったのだが…気に入ってくれたことが嬉しくて、つい明かしてしまった。
だがそうしたことでラスがぴょんぴょん跳ねて思いきり抱き着いてきたので、素直にラッキーと思ってしまったアーシェは、人妻にときめいてしまう自分自身を律するために大きく咳払いをして気を静めた。
「というわけで、集中したいから部屋から出てくれ。ごめん」
「ううん、私こそ邪魔しちゃってごめんね。アーシェ、少し寝た方がいいよ?後でご飯作って持ってきてあげるね」
2人の会話を椅子の上で膝を抱えて座って聞いていたデスは、会話の終了と共にゆっくり立ち上がると、手を伸ばして再びラスの手を握った。
アーシェはそれをちらりと目の端で見ていたが何も言わずに彫像を見上げてイメージを膨らませた。
――自分がモデルだと知って最高に嬉しくて仕方ないラスは、無理矢理デスの背中に負ぶさって螺旋階段の上の方を指した。
「屋上に行ってお花見しようよ。コーに声かけた方がいいのかなあ?」
「………まだ…寝てる…」
「じゃあ2人で行こ。ドラちゃんも居ると思うからデッキブラシで身体擦ってあげようかな」
実はラスと2人きりになれて密かに舞い上がっていたデスは、軽くてふにゃふにゃの身体の感触を背中に感じながら、屋上に上がった。
そして一瞬の後に気配を巡らして警戒をしたが――不気味な気配はなく、金色の花を見て歓声を上げたラスの手を離さずにベンチに座った。
「赤ちゃんを抱っこしてる…女の人…?」
丸いカーブを描き、前かがみになった髪の長い女性。
その両手は抱きしめるようにして、丸い卵を抱きしめていた。
ラスにはその卵が赤ちゃんに見えて、彫像の前に立ったままじっと動かないアーシェの隣に立って同じ景色を共有した。
「アーシェ…これ…素敵…!」
「!ああびっくりした…!いつ部屋に入って来たんだ?」
「え?気付いてなかったの?アーシェ、これ女の人だよね?この卵は赤ちゃんなんだよね?」
「ん、お前とルゥをモデルにした。まだ粗削り段階だから、これからもっと線を削って細くして…お前に近付ける」
ラスが目を見張ってアーシェを見上げた。
本当はラスがモデルであることを明かすつもりはなかったのだが…気に入ってくれたことが嬉しくて、つい明かしてしまった。
だがそうしたことでラスがぴょんぴょん跳ねて思いきり抱き着いてきたので、素直にラッキーと思ってしまったアーシェは、人妻にときめいてしまう自分自身を律するために大きく咳払いをして気を静めた。
「というわけで、集中したいから部屋から出てくれ。ごめん」
「ううん、私こそ邪魔しちゃってごめんね。アーシェ、少し寝た方がいいよ?後でご飯作って持ってきてあげるね」
2人の会話を椅子の上で膝を抱えて座って聞いていたデスは、会話の終了と共にゆっくり立ち上がると、手を伸ばして再びラスの手を握った。
アーシェはそれをちらりと目の端で見ていたが何も言わずに彫像を見上げてイメージを膨らませた。
――自分がモデルだと知って最高に嬉しくて仕方ないラスは、無理矢理デスの背中に負ぶさって螺旋階段の上の方を指した。
「屋上に行ってお花見しようよ。コーに声かけた方がいいのかなあ?」
「………まだ…寝てる…」
「じゃあ2人で行こ。ドラちゃんも居ると思うからデッキブラシで身体擦ってあげようかな」
実はラスと2人きりになれて密かに舞い上がっていたデスは、軽くてふにゃふにゃの身体の感触を背中に感じながら、屋上に上がった。
そして一瞬の後に気配を巡らして警戒をしたが――不気味な気配はなく、金色の花を見て歓声を上げたラスの手を離さずにベンチに座った。