魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
アーシェの集中力は途切れることなく、ずっと立ったまま…1日中何も食べないまま、無心になって彫像を彫り続けていた。
だが目の下にはくまができているし、どんどん形になっていく彫像は見ているだけで楽しかったが…このままでは体調を崩してしまうだろう。
コハクと一緒に部屋を訪れると、アーシェは足元を真っ白にしてノミを振るっていた。
その姿を見た途端ラスが飛び出して行き、コハクがデスに目配せをするとデスが心得たようにその後を追う。
「なあ、少し休憩した方がいいぜ。おい、聞こえてんのか?」
返事はなく、それが無視ではないことを知っているコハクは、近くに椅子に腰かけて形になってきた彫像を見上げる。
…髪の長い女性だ。
両手で包み込むように抱きしめているのはその腕に収まる大きさの卵で、表情はまだ彫られていないが…きっと慈愛に満ちた表情をしているだろう。
その背中には翼があり、アーシェが制作した作品の象徴を物語る。
閉め切った部屋は空気が悪く、コハクが窓を開けるとあたたかい風が吹き込んできて、ようやくアーシェの手が止まった。
そして思い出したように顔を上げたアーシェと目が合うと、コハクは行儀悪く椅子の上に立って背もたれに腰かけた。
「すげえな、半日でこんなに出来上がるもんなのか?」
「ああいや…普段はもっと時間がかかる。でもなんか…イマジネーションが湧いてくるんだ」
「でもチビが心配してるぜ。俺としちゃあ俺以外の男を気にかけてるチビを見るのは胸がきりきりするんだ。だからちょっと休憩してやれよ」
テーブルに道具を置いたアーシェは、そこでようやくゆっくり息を吐いてコハクの様子を窺う。
「…勝手にモデルにしたこと…怒ってるか?」
「いや別に。…別にってわけじゃねえけど、チビは可愛くて天使ちゃんみたいだからモデルになってもおかしかねえよ。だけどモデルにしたからには一切妥協はすんなよ。あ、戻って来たぞ」
「お待たせっ。あのね、卵とね、ハムとね、チーズとね、お野菜のサンドウィッチを作ってきたの。はいコーにもあげる
「むぐっ」
コハクの口に無理矢理サンドウィッチを1つ突っ込んだ後、てんこ盛りに盛られたお皿をアーシェに手渡したラスの表情はきらきら。
急にお腹が空いてきたアーシェは暑い紅茶と一緒にお皿を受け取ると、にこっと笑ってラスをほんわかさせた。
だが目の下にはくまができているし、どんどん形になっていく彫像は見ているだけで楽しかったが…このままでは体調を崩してしまうだろう。
コハクと一緒に部屋を訪れると、アーシェは足元を真っ白にしてノミを振るっていた。
その姿を見た途端ラスが飛び出して行き、コハクがデスに目配せをするとデスが心得たようにその後を追う。
「なあ、少し休憩した方がいいぜ。おい、聞こえてんのか?」
返事はなく、それが無視ではないことを知っているコハクは、近くに椅子に腰かけて形になってきた彫像を見上げる。
…髪の長い女性だ。
両手で包み込むように抱きしめているのはその腕に収まる大きさの卵で、表情はまだ彫られていないが…きっと慈愛に満ちた表情をしているだろう。
その背中には翼があり、アーシェが制作した作品の象徴を物語る。
閉め切った部屋は空気が悪く、コハクが窓を開けるとあたたかい風が吹き込んできて、ようやくアーシェの手が止まった。
そして思い出したように顔を上げたアーシェと目が合うと、コハクは行儀悪く椅子の上に立って背もたれに腰かけた。
「すげえな、半日でこんなに出来上がるもんなのか?」
「ああいや…普段はもっと時間がかかる。でもなんか…イマジネーションが湧いてくるんだ」
「でもチビが心配してるぜ。俺としちゃあ俺以外の男を気にかけてるチビを見るのは胸がきりきりするんだ。だからちょっと休憩してやれよ」
テーブルに道具を置いたアーシェは、そこでようやくゆっくり息を吐いてコハクの様子を窺う。
「…勝手にモデルにしたこと…怒ってるか?」
「いや別に。…別にってわけじゃねえけど、チビは可愛くて天使ちゃんみたいだからモデルになってもおかしかねえよ。だけどモデルにしたからには一切妥協はすんなよ。あ、戻って来たぞ」
「お待たせっ。あのね、卵とね、ハムとね、チーズとね、お野菜のサンドウィッチを作ってきたの。はいコーにもあげる
「むぐっ」
コハクの口に無理矢理サンドウィッチを1つ突っ込んだ後、てんこ盛りに盛られたお皿をアーシェに手渡したラスの表情はきらきら。
急にお腹が空いてきたアーシェは暑い紅茶と一緒にお皿を受け取ると、にこっと笑ってラスをほんわかさせた。