本気と浮気
「どう? 飲んでる?」

席の一番隅にいたわたしの隣に座った彼。
なんて名前だったっけ?

思いだせぬまま、あいまいにうなずく。


「もう卒業でしょ? 就職先は決まってる? いま、どんな感じよ?」

矢継ぎ早に訊いてくる彼は、いかにも運動部に所属していましたというアクティブで爽やかな体育会系の笑顔。
わたしの隣に並ぶ肩は、がっしりとしていて。
なのに、襟もとからのぞく鎖骨が妙に色っぽい。

そこから視線をはずして、一生懸命考える。


こんな彼、3年のときにクラスでいたかしら?


助けを求め、わたしは一緒に来た友人を目で探す。
けれど、彼女はわたしのほうに気づかず話が盛りあがっている様子。


そのとき、彼が身体をかたむけ、場からわたしだけを切り離した。


「彼氏、いるの?」
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