臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
いないか…。1人寂しく窓側に座った。ふと外を見ると小雨が降っていた。


「あれ?速水さん、これからですか?遅いですね」


想いを寄せている雪菜が食べ終わったトレイを持って、航平の横を通りかかった。


「ああ、雪菜ちゃん、いたんだ。久しぶりだね」


以前の航平なら雪菜の姿を目ざとく見つけていたものだ。それに姿を見れば嬉しくなったものだ。

それが、今は食堂を見渡した時に探すどころか、いたはずの雪菜が全然目に入らなかった。航平の心に変化が表れたのかもしれない。


(あれ?俺、変だな?)


今までと違う自分に航平は何だか戸惑いを感じた。


「じゃ、お先に失礼します」

「あ、うん」


食堂を出て行く雪菜を見送りながら、今まで感じていた気持ちがなくなっていることに航平は気付く。
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