臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
佐久間は仲良く手を繋いで歩く二人の後ろ姿を見ながら、恨めしそうについて行く。


「麻由子、遅かったね!あれ?速水さんじゃないですか!何で?」


麻由子が無事戻ってきたことに千尋は安心したが、隣りに立つ航平を見て、目を丸くする。

その少し後ろに不機嫌な顔をした佐久間も見えた。


「ごめんね。私、もう帰るね」


麻由子は壁に掛けてあったキャメル色のハーフコートをハンガーから取って、抱える。


「え?え?速水さんと帰るの?」

「うん」


頬をほんのり赤くして、小さく頷く麻由子の耳に千尋は素早く近付いた。


「今夜こそ襲うのよ」


麻由子の耳元でまた物騒なことを囁く。
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