臆病な恋心～オフィスで甘く守られて～

突然握られた麻由子は頬を少し赤くして、隣りに立つ航平を見上げた。航平も麻由子を見たから、二人は数秒見つめ合う。佐久間はそんな二人の姿に顔をしかめた。


「さあ、行こうか」


航平が麻由子をリードして、歩き出そうとする。


「ちょっと、待ってください！」


二人に背中を向けられた佐久間がただ黙って見送るはずがない。


「あ、佐久間だったのか？何でここにいる？何か用？」


航平は今佐久間に気付いたという感じに振り向き、冷たい視線を向ける。


「えっと…」


佐久間は航平の会社では見ることのない冷たい視線にたじろぐ。

この冷たい目はいつもの爽やかさが消えている。


「えっと、速水さんと藤野はどういう関係ですか？」


どういう関係…同じ会社に勤める先輩、後輩という関係だが、それを言ってしまったらこの場に来た意味がなくなる。