臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
「え、でも…」

「何か予定あるの?」

「いえ、何もないです」

「俺も何もない。ね、だから、行こう」


航平に手を引かれて、駅の改札を通った。


どこに行こうとしているのだろう。

麻由子が訊ねると、先月にオープンしたばかりの大型ショッピングモールに行くと言う。


「麻由子ちゃん、行ったことある?」

「ないです」

「俺も初めてなんだよね。楽しみだね」


電車内は少し混雑していたので、二人はドアの近くに立った。ドアのガラスに航平と並んでいる姿が映る。

麻由子はその姿を信じられない思いで見ていた。


夢みたい。

速水さんとデート出来るなんて。


(今日の速水さんも素敵だな)


初めて見る私服姿にもうっとりとする。
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