臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
大きな窓から見えるきれいに整備された庭を眺めながら、トマト味のスープパスタを麻由子は食べていた。

目の前にはずっと想い続けている航平がいて、カニ風味のクリームパスタを食べている。

いつかこんな風に二人で向かい合って、食事をするのも夢だった。麻由子の目には航平だけが輝いて見えた。他はすべてが曇っている。

恋の力はすごい。大好きな人、たった1人しか目に入らない。


「美味しいね」


航平が微笑むだけで、麻由子の目はハートになる。


「はい、美味しいです」


本当はこの夢のような状況に浮かれていて、味なんて分かっていない。だけど、「美味しい」と言われれば、何でも「美味しい」と感じる。

まるで魔法にかけられたみたいだ。


デザートに麻由子はフルーツタルト、航平はティラミスを頼んだ。
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