臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
「雪菜…一緒に帰れば大丈夫だから。よろけても俺がしっかり受け止めるよ」


竜哉は雪菜の腰に手を回して、引き寄せる。航平を挑発するためだ。

諦めろ、俺の女に手を出すな!竜哉の目は航平に対して、威嚇していた。

航平の眉がピクリと微かに動く。睨まれて怯んだのではない。竜哉の態度が気に食わなかった。それと、引き寄せられて頬を少し赤くした雪菜を見せられたことにも腹か立った。

しかし、そんな気持ちは表に出さない。出すものか。

爽やかさを消すことはしない。


「じゃ、またねー!」


軽く右手を上げて、雪菜にだけ極上の微笑みを見せて、二人から離れた。

去っていく姿は爽やかだが、心の中は黒くなっていた。


(いつもいつも嫌みな奴め)


だけど、離れてからも態度には出さないで平然と歩いた。


振られたのは二ヶ月前だ。酒の席での告白で、その時の航平は酔っていたが、意識ははっきりしていた。
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