臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
そばにいたい
温泉旅行から3ヶ月が過ぎ、春という季節を体で感じるようになってきていた。

昼間のコートは必要なくなってきていて、外回りから戻った航平はコートを脇に抱えて、営業課のドアを開ける。


「戻りましたー」

「お疲れさま。速水、ちょっと来てくれ」


自分のデスクに荷物を置く航平を課長が呼ぶ。


「はい」


課長の後を歩き、奥にある応接室に入った。向かい合って座る。何事かと緊張して、背筋が伸びた。


「速水、札幌に異動が決まった。一応確認だが、問題なく行けるよな?」


もしかしたらこの春に異動があるかもしれないと予想はしていた。もちろん断るつもりもなく承諾する予定だった。

だけど、札幌は遠い。すぐ脳裏に浮かんだのは愛しい麻由子の顔である。
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