臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
利害が一致したと喜ぶ楠本の行動は素早かった。その日の昼休み、総務課に現れ、麻由子の肩を叩いた。


「決まったぞ。明後日の6時に下のロビーに来いよ。よろしく」

「え?…えー!ちょっと待ってよ!」


麻由子の返事を聞かずにサッサと消えた。素早く決断力があるのはいいけど、人の返事をちゃんと聞かない困る男でもある。

麻由子はどうしたらいいものかとオタオタする。


「お待たせー、行こう」


トイレから千尋が戻ってきた。どう話を切り出そうかと麻由子は悩む。

二人は社員食堂で向き合った座った。


「千尋。あのね…」

「ん?何?」


麻由子は食べる手を止めて、千尋に声を掛けた。ちょうど日替わり定食の唐揚げを口に入れた千尋は口をモゴモゴさせながら、 麻由子の話の続きを待つ。
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