臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
役に立つようで立たない男である。


「何よ、それ。それって聞いたうちに入らないでしょ!」

「知るかよ」


怒る千尋に対して、佐久間は不機嫌な声を出す。

「まあ、まあ」と楠本が間に入る。


その後は、航平のことに触れないで他愛のない話で盛り上がった。麻由子もみんなの楽しい話に笑う。気の置けない友だちと楽しく飲んで、喋って、心から笑えるようになっていた。

笑う麻由子を見て、他の3人は安心する。


「あれ、やっぱり楠本じゃないか。佐久間もいるし、それに藤野さんまで」

「主任!ここで飲んでいたのですか?」


トイレに向かおうとしていた営業課の主任は楠本の笑い声が聞こえて、声のする席を覗いてきた。主任は航平の彼女が麻由子だと知っている。

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