臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
「うん。速水ももちろんそこにいるよ。連れて来ようか?俺、嫁さんに呼び出されてもう帰らなくちゃならなくてさ。課長もそろそろ帰ると言ってたし」

「え?あの…」


今夜は航平に会わないと思っていたから、麻由子は焦った。航平のことを忘れて飲んでいたのに。


しかし、気を利かせたつもりの主任は航平を呼びに行ってしまう。


「千尋。どうしよう…私、どんな顔したらいいの」

「大丈夫だよ、麻由子」


何となく航平に会いたくないと思う麻由子はどこかに逃げたい気持ちになっていた。


「藤野。出ようか?」


航平が来る前に外に出てしまえばいいと佐久間が麻由子の腕を掴む。会いたくない時は、会わなければいい。佐久間は麻由子の気持ちを優先させたかった。


「ちょっと、佐久間。待てよ」


暴走しそうになる佐久間の肩を掴み、楠本が引き止める。だけど、佐久間は麻由子を離そうとしなかった。
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