臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
「航平さん、食べないの?」


二口ほど食べた麻由子は手を止めて、何だかボーッとしている航平に声を掛ける。


「麻由子…」

「はい?」


ただならぬ空気を感じた麻由子は手にしていたデザートフォークを皿の上に置いた。さっきまで緩んでいた表情が硬くなる。


「札幌に行く日が決まったんだ」

「え…いつ?」


航平は2週間後に出発することを告げる。出発してしまう日が近付いていることは分かっていた。でも、実際に告げられて…麻由子の表情は固まる。

そして


固まっていた表情が少しずつ崩れ、今にも泣き出しそうになる。目に涙が浮かんできた。


(やばい…今だ!泣かれる前に!)


航平は急いでポケットから赤いリボンの付いた小さい箱を取り出して、麻由子の前に置く。



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