臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
(このかっこいい人、どこの誰?)

首から下げられている社員証を見る。

速水航平。

この名前が麻由子の脳にインプットされた。


実は航平も遅刻ギリギリの出勤になっていて、会社が見えてきた辺りから社員証をぶら下げて、早歩きをしていた。航平も間に合う計算で動いていた。

しかし、数歩前で派手に麻由子が転んだ。

麻由子に手を差し伸べていたら遅刻になると分かってはいたけれど、見て見ぬふりは出来なかった。麻由子とともに遅刻が決定した。


「すいません…私のせいで…」


麻由子は恐縮して、頭を下げた。


「大丈夫だよ。それより膝、擦りむいている。医務室に行って手当してもらおう」


「え?あ、痛っ…」


言われて、滲む血を見た途端に痛みを感じた。擦り傷だけではくストッキングまでが破れて伝線していた。恥ずかしい姿に顔が赤くなる。

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