臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
美里は航平に手を振り、小走りでちょうど開いたエレベーターに乗り込んだ。航平は上昇していく数字を横目で見て、自販機へと行き、小銭を入れる。


今がチャンス?

麻由子は小さく深呼吸をして、航平を近付いた。


「速水さん…おはようございます」


取り出し口から缶コーヒーを取った航平が声の聞こえる方にと顔を向けた。


「ああ!藤野さん、おはよう」


爽やかな笑顔を見せながら、体を起こす。


「この前はありがとうございました」


麻由子は胸を高鳴らせながら、丁寧に頭を下げた。


「ううん。そうそう、聞いた?楠本たちのこと」


「はい、聞きました」


航平は取り出した缶コーヒーをスーツのポケットに入れる。ポケットがぼっこりと膨らむ。
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