臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
その時、航平が足を止めて振り返った。突然のことに麻由子の背筋が伸びる。


「藤野さん、またね」


笑顔で右手を挙げて、エレベーターに乗って行った。

結局麻由子は一緒に乗らなかったが、ペコリと頭を下げる。存在を無視されなかったことが嬉しくなった。

それと、少しだったけど、話せたことがとても嬉しかった。


同じのを買おうかな…麻由子は、航平が買ったのと同じ缶コーヒーを買って、そっとカバンに入れた。

同じものを買ったことで、近付くことが出来たとこっそり喜ぶ。

明日も話がしたい。明日も頑張って、話し掛けよう。


前向きになった麻由子はしっかりした足取りで歩いた。
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