臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
「じゃ、今書いちゃうから、そのペン貸して」
 
「はい。どうぞ」

麻由子のデスクの上にあったペンを取り、隣りの斉藤さんのデスクに腰掛け、書き始めた。


(速水さんが…あたしのペンを使ってらっしゃる。こんなことが起こるなんて…)


心の中で興奮する麻由子の手はまだ震えが止まらなかった。

書き終えた航平は「ありがとう」とペンを戻して、微笑む。
  

「はい、これよろしくね。後日、引き取りに来るけど、いつなら大丈夫?」


申込書を麻由子に渡しながら、尋ねる。麻由子は急いで卓上カレンダーを見る。


「はい。あの…今日が金曜日なので、火曜日には手配出来てます」

「火曜日ね、了解。じゃ、また火曜日にくるからよろしくね」
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