臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
美里は麻由子に体温計を渡す。麻由子は受け取って、脇に挟む。美里は航平がかけ損なった布団をかけた。


(今、航平って、言ったよね?)


熱でぼーっとなっている頭でもしっかり「航平」と呼ぶ声を認識した。


ピッピッ…体温計が鳴る。


「見せて」


麻由子は脇から離して、美里に渡した。


「38℃もあるじゃない。今、薬出すから、待って。朝ご飯は食べてきた?」

「やっぱり熱あったじゃん。しかも高いし」


航平が心配そうに見つめる。


「すいません…」


シュンとなる麻由子を見て、笑う。


「クスッ。謝らなくてもいいけど、無理しちゃダメだよ。もっと酷くなったら大変だからね」


無理して来てしまったことで、航平に迷惑をかけてしまった。麻由子はいたたまれない気持ちになる。

でも、航平は全然迷惑だなんて思っていない。
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