臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
「はい、これ食べて元気になって」


航平から渡されたビニール袋の中にはリンゴが5個入っていた。美里からのお見舞い品だ。


「リンゴ…ありがとうございます!」

「じゃ、お大事にね」


航平は玄関のドアに手をかける。


「あ、あの…」

「ん?」


わざわざ届けてくれたのだからコーヒーの1つでも出した方がいいのかなと思って、勇気を振り絞る。


「あがっていきませんか?」


部屋に男性を誘うのは初めてだったので、また熱が出たのかと思うくらい頬が熱くなる。


「いや、暗い時間に女の子の家にあがるのは悪いし、疲れさせてもいけないから帰るよ。早くよくなるといいね」


航平は麻由子の体を気遣いながら、断る。





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