カノンとあいつ







───── 由季




───── 志帆




───── 未由









准に寄りかかるようにして瞳を輝かせる女の子と不意に目が合う。





「これって…名前よね?」


「そう、この子のね…」


「クイズな訳?」


「違うよ、君に決めて欲しいんだ」


准が女の子に顔を近づけて小さな目配せをすると、
「せーのーでやるの!」

まだ舌足らずの声が、好奇心を抑揚に代えて言う。


「僕は決めてるし、この子も決めてる…でもそれは内緒なんだ」



准が促す「…ねっ?」の声に、女の子が身体を揺らして頷く。



なんか、さっきから私だけ置き去りにされてる…。


准……………


何言ってるの?



「勿論、君次第なんだ、この子はずっと君を待ってたんだ」






その三つの名前はどれも、私の“志由”の名前から一文字ずつ宛てがわれていて…。



──── えっ、まさか!



そうなの?



………この子



ここでずっと待ってくれてたの?



私の中に封印されてきた感情が“夢という現実”を使って、少しずつ少しずつ私を孤独の淵に追いやろうとしている。


心の中で助けて!って叫んでも…駄目?


神様…お願いだから、私をもう少しここに居させて!







───── ───── ─────






私達はまるで普通の親子みたいに、とりとめもない談笑を楽しんでいる。

浅い夢のような、未知の感覚に包まれた幸せな高揚感。

綺麗な音楽……

一秒でも長くこうして居たい……。

もうちょっと。

あと少しでいいから!





それでももう一人の醒めた私は、守り抜こうと決めていたタブーを侵そうとして、密かに言葉を選ぼうとさえしている。


─── 感情の矛盾に赤い舌を出して笑っても平気な、もう一人の私。










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