カノンとあいつ
シュール
ねえ……………
「ねぇ准?」
………と、准が私と同じだけ表情を強張らせる。
見つめ合うお互いの瞳の中を往き来する──“まさか”
…………でも
もういいんだ!
私、決めたよ?
「准、あなた今、何処に居るの?」
今私を突き動かそうとしているのは、目も眩むような残酷で意地悪な衝動……。
准が忽然と変容してゆく様を、私は目を逸らさずに見届けなければならない。
これは多分、准が私にくれた最後の宿題だから。
目の前の准の格好をしたマネキンが、瞳孔の開いた真っ黒な瞳をゆっくりと持ち上げる。
怖い…………!
「ごめん、少し急ぐんだ…もう行かないと」
言いながら、女の子に触れていた指先が神経質に震え始める。
…………何?
「急に何?
行くって、何処へ行くの?」
「それは聞かない約束だろ?」
「准、何言ってるの!?
ふざけないで!」
肩をすくめたまま鼻白む准。
その腰に、必死にしがみつこうとする女の子。
私を真っ直ぐに見る、准の大きく見開いた瞳。
テーブルの蝋燭が、丸い炎を一瞬、機敏な生き物のように窄め直す。
……もう何も言ってはくれないんだよね?
あの時だって………
さよならも言ってくれなかった。
准が ─────
──── 消えてしまう!