恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
清美はひとつ頷き、ゆっくりと踵を返した。
そのまま屋敷の方へと戻っていく。
環はぐっと手を拳に握りしめ、その背を見つめた。
――――立場の違い。身分の違い。
それは今の自分にはどうにもできないものだ。
たとえ、どんなに望んでも……。
今できることはひたすら尽くすことだけだ。
この想いを口に出すことも、態度に出すことも、今の環の立場では許されないのだ。
花壇の奥にはラベンダーの木が並んでおり、可憐な紫の花が風に揺れている。
環は花壇の方へと足を向けながら、遠い昔の記憶に思いを馳せた。