恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】




────学校を出て15分後。

花澄は家の門をくぐり、倉庫脇の自転車置き場に自転車を置いた。

学校から家までは自転車で10分ほどで、それなりに近い。

鞄を持って玄関ホールに入ると、髪を後ろで束ねた中背の女性が慌てた様子で奥の廊下から走ってきた。

女性はにこやかな笑顔を花澄に向け、花澄が手にしていた学生鞄を受け取る。


相沢律子。40歳。

花澄が生まれた時から、花澄の屋敷で住み込みでハウスキーパーをしている女性だ。


「お嬢様、今日は遅かったですね。さ、こちらへ……」


律子はいつも花澄が使っているスリッパを手早く脇の棚から出し、花澄の前に並べた。

ありがとう、と花澄は言いながらスリッパを穿き、ホールの奥にあるリビングの方へと歩いていく。



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