恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
3.神社の例祭
翌日の日曜日。
花澄は雪也と共に、鎌倉の五所神社の例祭に参加していた。
雪也に渡された深緑色のはっぴを着込み、男衆や女衆に混じって神輿を担ぎ、材木座の細い道を湘南道路の方に向かって練り歩いていく。
前後には赤や紫の紐が結われた神楽や山車が続き、唄衆や笛衆の唄に合わせて皆が威勢のいい掛け声をあげる。
神輿は何台かあり、子供神輿もあれば金髪の若い男衆が担いでいる神輿もある。
そして神社関係だろうか、白装束に烏帽子という姿で神楽を担いでいる男衆もいる。
祭りの一行はやがて材木座海岸に到着し、神職による神事が厳かに執り行われた。
その後、二台の神輿を男たちが担ぎ上げて海へと入っていく。
その勇壮な光景に、花澄は声を上げた。
「すごいねぇ~……」
「今日は天気がいいから、なおさら威勢よく見えるね」
雪也は海に入っていく神楽を眺めながら、楽しげな声で言う。
二人は波打ち際から少し離れたところで、祭りのクライマックスである海への渡御の様子を眺めていた。
雪也も花澄と同じく、深緑色のはっぴに手ぬぐい、下はジーンズという格好だ。
雪也はもともと整った顔立ちなので何を着ても似合ってしまう。
花澄も海の方を眺めながら、口を開いた。