恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「ねえ、雪くん。雪くんは海に入らないの?」
と、花澄が聞くと。
雪也はハハと笑い、花澄を見た。
「海に入るとなると、あーいう格好にならなきゃいけないけど?」
と、雪也が指差した先をよくよく見てみると。
海に入っている男衆は殆どが褌か股引を身に着け、それ以外は何も身に着けていない。
その恰好は、遠目から見るとほとんど裸と同じだ。
「……っ!?」
花澄はカッと頬を染め、視線を逸らした。
とんでもないことを聞いてしまったと赤面する花澄に、雪也は畳み掛けるように言う。
「残念ながら、ああいうの持ってないんだよね。……ひょっとして、見たかった?」
「……っ、そんなわけないっ! 見たくないからっ」
「そこまでハッキリ言われるのもなんだか傷つくな。……そういえば……」
と、雪也が言いかけた時。
後ろの方から、ざっと砂を踏みしめる足音とともに、低いバリトンの声がした。