恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
そしてリビングに入ったところで。
奥のキッチンから出て来た少年が、花澄に向かって優雅に一礼した。
「────お帰りなさいませ、お嬢様」
少年は言い、榛色の瞳を細めて花が綻ぶように微笑んだ。
どことなく愁いを帯びた、その美しい瞳。
まるで貼り付けたかのように端麗かつ完璧な笑顔。
その笑顔に、花澄は内心でヒィと息を飲んだ。
……そう。
『彼』は、ただの幼馴染……ではなく。
花澄の家の『執事』、つまり使用人でもあるのだった────。