恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



花澄は雪也を手本にしながら、キューをそっと握ってみた。

ここまでは特に問題はない。

雪也は軽く頷くと、ビリヤード台に歩み寄った。

そのまま背を屈め、キューを握っていない方の手をキューの先に添える。

……その洗練された、優雅な仕草。

花澄は思わずドキッとし、雪也をまじまじと見つめた。


「キューの先を、こうやってブリッジで支えるとキューがぶれにくくなるんだ。……あ、ブリッジってのはこの指の支えのこと。さ、やってみて?」


雪也に言われるまま、花澄も腰を屈めてポーズをとってみた。

キューを握っていない方の手で指の輪を作り、そこにキューを通す。

……が。


「……花澄ちゃん、そんなに力入れたら指がツるよ?」

「……っ」


手を置いた位置がまずかったのか、なんだか体勢が辛い。

ぷるぷる震える花澄の横で、雪也がカタンとキューを置いた。

そのまま花澄の後ろに歩み寄り、キューを持つ手にそっと触れる。

花澄は雪也の手の感触に思わず息を飲んだ。


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