恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「わかっただろ? 俺が腹黒いって。……嫌いになった?」
少し陰りのある、低いテノールの声。
花澄を見つめる、真摯な瞳。
強引に誘導しておきながら、こうしてどこか哀しげに花澄を見るのも――――昔から変わらない。
花澄はふるふると首を振った。
「……そんなわけないよ」
嫌いになるどころか……
これまでになく、胸がドキドキする。
本当に、このままでは憧れだけではなくなってしまいそうで……少し、怖い。
それにしても……。
そこまでして雪也が自分と食事をしたいとは、どういう風の吹き回しだろうか。
花澄は不思議に思いながら、雪也に連れられるまま、駅の方へと歩き出した……。