恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
5.執事の袈裟斬り
7月末。
終了式の後。
花澄は知奈とともに、学校の近くにできたネイルショップにいた。
『オープン記念高校生特別価格! ハンドケア + カラー(1色)でなんと777円!』
この価格が高いのか安いのか、ネイルショップ初体験の花澄にはよくわからないのだが、知奈に言わせると『格安!』らしい。
知奈に続いてお店に入った花澄は、店員の案内でカウンター向かいの椅子に座った。
店の中はさほど広くないが小奇麗で明るく、入口や窓のところにオダマキや露草などの野の花を、センス良く活けてある。
店員は茶色の髪を後ろでまとめた25歳くらいの女性で、花澄がおどおどしていると、安心させるようにこやかに微笑んだ。
「さ、お座りになってください。まずはファイリングから始めますね~」
店員は花澄に座るよう勧め、テーブル脇の道具入れからヤスリを取り出した。
ハンドレストに乗せた花澄の指の爪の長さを、一本一本、ヤスリで丁寧に揃えていく。
どうやらこれをファイリングというらしい。