恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



―――― 一時間後。

花澄は知奈と共に、北鎌倉駅近のカフェにいた。

お互いに爪を見せ合い、ネイル談義に花を咲かせる。


「いいじゃん、その色! 良く似合ってるよ~」

「知奈も似合ってるよ~、ネイルって本当にいろんな色があるんだね」


知奈が選んだのは、ピンクベースに紫が少し入った、落ち着いた色だ。

花澄は今回、ネイルサロン初体験だったのだが、知奈は何回か行ったことがあるらしい。

知奈はずずっとコーヒーを飲むと、ふぅと小さく息をついた。


「今日のトコは、技術はまあまあってとこかな。エクステとかしなかったから、実際のところはわからないけど」

「……エクステ?」

「付け爪のこと。でもあれやっちゃうと、取るのにまた店に行かなきゃならないんだよね。うちらにはまだ敷居が高いから、ここまでかな」


知奈の話によると、一度ネイルサロンで爪を付けてもらうと、自分で外すのは困難なため、店に行って外してもらうことになるらしい。

自分でも剥せないことはないのだが、そうすると爪がかなり傷んでしまうそうだ。

そして店で外すと、また付けたいと思い、新しい付け爪をつけて……。

……つまり一度通い始めると、続けて通うことになるらしい。

自分で働いていれば通うことも可能だが、高校生の小遣いの範囲ではそれはかなり痛い出費になる。


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