恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄は環の端整な顔を脳裏に思い描いた。
……清冽で、でもどこか人を誘い込むような甘さを持つ環の瞳。
けれどその表情にはいつも、どことなく翳りがある。
孤独の影、とでもいうのだろうか。
クラスの中に居ても、どれだけ大勢の人の中にいても、その影は消えることはない。
それは環に父親がおらず、その上母親の律子が環にとっては厳しい母親だったせいかもしれない。
両親の愛情に飢えていた環。
そしてそれは、自分も一緒だ。
半身だと思うのは、お互いに自分の孤独を互いの存在で埋めようとしていたせいかもしれない。
花澄は環に、環は花澄に、『家族』の温もりを求めた。
……ただの幼馴染とは言えない二人の関係。
そして今も、その孤独は消え去ったわけではない。