恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
知奈はじーっと花澄を見つめる。
花澄は知奈の言葉に眉を上げた。
……自分に、関係がある?
花澄は思い当たる節を考えた。
しかし思いつくのはひとつしかない。
――――執事としての仕事が忙しいから彼女と付き合う暇がない。
それ以外に理由はないだろう。
そしてそれは、知奈に知られてはいけない秘密だ。
花澄は動揺を悟られないようにできるだけ自然な笑みを浮かべて言った。
「うーん、思い当たらないな~。でも私には関係ないと思うよ? 単純に、気に入る女の子がいないってだけなんじゃないかな?」
「えー、そーかなあ……」
「そういえばさ。文化祭の予算申請、文芸部の分が出てないけど、いいの?」
花澄はさりげなく話題を変えた。
ちょっと強引だっただろうか。
けれど知奈は気にした様子もなく、首を傾げる。