恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



知奈は二人の姿を思い出すように、腕を組んで上目づかいで呟く。

花澄は胸がズキッと痛むのを感じた。

……そう、美鈴と自分は何もかもが違う。

そして周りの皆の態度も、美鈴に対してのものと自分に対してのものでは明らかに違う。

それは美鈴がそれだけ努力をしているせいでもあり、当然のことだと花澄も思う。

けれど……。


脳裏に浮かぶ、雪也の優しい眼差し。

美鈴が雪也を好きになった気持ちが花澄にもよくわかる。

雪也の傍に居ると温かい気持ちになる。

ただ傍に居るだけで、温かい何かに包まれているような気分になるのだ。

ちなみに知奈は美鈴と花澄が雪也の婚約者であるという事実は知らない。

環が花澄の家の執事であるということ以上に、学校では伏せておかねばならない秘密だ。


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