恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「あぁ、環~! 今年も来てくれたのね~」
甲高い声とともに、ホールに入ってきた数人の女性たちが環を取り囲んだ。
女性たちは既にパーティ用の盛装をしており、化粧も髪も完璧だ。
環は手にしていたグラスポットを置き、優雅に一礼した。
「お久しぶりでございます、千田川様」
「環のコーヒーが飲みたくてわざわざ来たのよ~。相変わらずイイ男ねぇ」
「可分なお言葉痛み入ります、櫻井様」
環は執事として完璧な、にこやかな笑顔で言う。
環は昔から女性達に人気があったが、高校に入り身長が175を超えた頃から、女性達から熱烈な視線を浴びるようになった。
「環~。今夜、あたしたち部屋飲みするんだけど。一緒に飲まない?」
「有難いお言葉ですが、まだ未成年ですし、私には主もおりますし……」
「主って、あの田舎っぽい高校生の子でしょ? コドモのお守りより、あたしたちと飲む方が数倍楽しいわよ~」
女性達はカラカラと笑いながら言う。
花澄はホールの入口で聞きながら、ガクリと肩を落とした。
……どうやら自分は執事に釣り合わない主と思われているらしい。