恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
確かに今日の環は執事服を完璧に着こなしており、立ち居振る舞いもいつにもまして優雅だ。
てきぱきと流れるような動作でコーヒーや紅茶を淹れる姿は、女性であれば誰しもが目を奪われてしまうほど格好いい。
現に花澄も、執事姿の環を見ているとなぜか胸がドキドキしてくる。
……しかし。
今日はたまたまこういう格好をしているが、屋敷ではジーパンにTシャツなのだ。
しかも懸賞で当てた、くまモンやひこにゃんなどのキャラものTシャツなのだ。
それでも似合ってしまうのが環の恐ろしいところではあるのだが。
――――それにしても。
花澄は思わずジトッと環を見据えた。
女性達に囲まれ、にこやかな笑顔を振りまく環を見ていると、心の奥底から何やらムカムカしたものが込み上げてくる。
仕事だとわかっていてもなんだか面白くない。
と、出るに出れず悶々としていると。
環が、ふいに花澄の方へと視線を投げてきた。
女性達の話に相槌を打ちながらも、視線はちらちらと花澄の方を見る。
……やがて女性達が奥の控室の方へと向かった後。
ちょいちょい、と環が小さく花澄にしか見えないように手招きした。