恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



確かに今日の環は執事服を完璧に着こなしており、立ち居振る舞いもいつにもまして優雅だ。

てきぱきと流れるような動作でコーヒーや紅茶を淹れる姿は、女性であれば誰しもが目を奪われてしまうほど格好いい。

現に花澄も、執事姿の環を見ているとなぜか胸がドキドキしてくる。

……しかし。

今日はたまたまこういう格好をしているが、屋敷ではジーパンにTシャツなのだ。

しかも懸賞で当てた、くまモンやひこにゃんなどのキャラものTシャツなのだ。

それでも似合ってしまうのが環の恐ろしいところではあるのだが。


――――それにしても。

花澄は思わずジトッと環を見据えた。

女性達に囲まれ、にこやかな笑顔を振りまく環を見ていると、心の奥底から何やらムカムカしたものが込み上げてくる。

仕事だとわかっていてもなんだか面白くない。


と、出るに出れず悶々としていると。

環が、ふいに花澄の方へと視線を投げてきた。

女性達の話に相槌を打ちながらも、視線はちらちらと花澄の方を見る。

……やがて女性達が奥の控室の方へと向かった後。

ちょいちょい、と環が小さく花澄にしか見えないように手招きした。



< 189 / 476 >

この作品をシェア

pagetop