恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
――――20分後。
花澄は軽食を一通り食べ終わり、フォークを皿の上に置いた。
軽食はどれも美味しく、花澄はぱくぱくと食べてしまった。
しかしその中でもポテトサラダは特に美味しかった。
……恐らくこれは、環が作ったものだろう。
環はこういった基本的な料理を誰よりも美味しく作ることができる。
環の料理の腕が一流だと思うのは、料理のレパートリーの広さももちろんだが、こういったシンプルな料理をより丁寧に、美味しく作れるからだ。
しかし環は、花澄にその作り方を教えてくれようとはしない。
教えてよと過去に何度も頼んだのだが、全て断られてしまっている。
「執事的には企業秘密なのかな。減るもんじゃないし、別に……」
「お食事はお済みですか、お嬢様?」
横から声を掛けられ、花澄ははっと顔を上げた。
見ると、環が盆にコーヒーを乗せて歩み寄ってくる。