恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
さっきは服が濡れていたので、慌てて着替えなければと思い、あまり深く考えなかったのだが……。
――――トランクの中にドレスは入っていただろうか。
昨日、クローゼットから取り出してハンガーをカーテンレールに引っかけたとこまでは覚えているのだが……。
その後……。
「……」
「……お嬢様?」
「…………」
「どうかなさいましたか、お嬢様?」
環が眉根を寄せて花澄の顔を覗き込む。
花澄は顔ざめた顔で環を見上げた。
……昨日から『何かが足りない』と思っていたのだが。
「環……どうしよ……」
「……?」
「ドレス、家に忘れてきちゃった……」