恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
環は言い、ドアの方を指差した。
行け、という相図らしい。
確かに自分で選ぶより環に選んでもらった方がいいだろう。
その方が客観的に見ることができる。
けれど……。
不安そうな顔で見上げた花澄に、環は唇の端で笑った。
……意地悪そうな、その微笑み。
目を見開いた花澄の肩を掴み、環は軽く引き寄せた。
耳元に、花澄にだけ聞こえるような微かな声で囁く。
「……全く、本当に手のかかるご主人様だな、お前は?」
「……っ、環……」
「いいから戻って待ってろ。おれに任せとけ。……わかったな?」
力強い、その囁き。
……大丈夫だ、と告げているその瞳。
花澄は心がジワッと熱くなるのを感じた。
環はいつも自分を助けてくれる。
環が自分の信頼を裏切ったことはない。
花澄は目頭が熱くなるのを感じながら、コクリ、と素直に頷いた……。