恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
――――30分後。
花澄は環が衣裳部屋から持ってきた服を身に着け、鏡台の前に座っていた。
環がセレクトしたのは、濃赤のカシュクールワンピースと、レースの黒のボレロ、そしてパールのネックレスと黒いハイヒールだった。
ワンピースは襟元に着脱式の毛皮の襟がついていたようだが、環はそれを外し、代わりに別のドレスに付いていたシンプルなレースの襟を付けてきた。
黒のボレロには豪華な金の留め具が付いていたが、その代わりに置いてあった帽子に付いていた上品なコサージュを付けてきた。
……やはり環に任せて正解だった。
自分ではとてもここまで考えてセレクトすることはできない。
「お嬢様、お手をお出しください」
「え……っ」
「もうあまり時間がございません。その衣装に合う化粧を私が施してさし上げます」
環は言うなり、ぐいと花澄の手を掴んだ。
――――力強く大きなその手。
花澄は思わずドキッとし、息を飲んだ。
環は花澄の前に跪き、どこから持ち出してきたのか、化粧道具一式が入った箱の中からマニキュアを取り出して花澄の爪に塗り付けていく。