恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄は環を見上げ、心から礼を言った。
本当に、環がいなければパーティに出られなかったかもしれない。
花澄はポーチを受け取り、ドアの方を向いた。
――――ここから先は、一人だ。
環はパーティ会場で給仕をするため、花澄と一緒に居れるわけではない。
足を止めた花澄を環が横から覗き込む。
「どうかなさいましたか、お嬢様?」
「……あ、ううん。大丈夫」
「……お嬢様……」
環はそっと花澄の頬に手を伸ばした。
……微かに触れる、指先。
驚いて顔を上げた花澄の目に飛び込んできたのは、環の優しい瞳だった。
「大丈夫ですよ、お嬢様」
「……環……」
「これだけ着飾れば、たとえ元がヘチマでもカボチャのように見えますよ。猿にも衣装とは言いますが、日光の猿程度には見れるお姿になっております」
「……全く褒めてないじゃん」