恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
どうやら工房の機械化について話をしているらしい。
花澄ははあと息をついた。
正直、花澄には機械化する方がいいのかしない方がいいのか、よくわからない。
個人的心情としては全て手作業でやりたいが、このままでは売り上げが伸びないのもまた事実だ。
と思った時、美織が話題を変えた。
「あと、あの子達の婚約の件だけど」
「……?」
「美鈴が高校を出たら、雪也さんと美鈴の正式婚約を月杜さんに打診するから。繁次、あなたもそれでいいわね?」
美織の有無を言わせない響きに、父は一瞬息を飲んだようだった。
やがて父がため息交じりに言う。
「姉貴の好きにすればいい。そもそもこっちは分家だ、月杜さんとは家柄が釣り合わん」
「……ま、そうね。もともと美春のかわりに花澄を、って話だったわけだし」
美織の言葉に、花澄はぐっと唇を噛みしめた。
美春というのは美鈴の姉で、斎賀さんという銀行の頭取の息子と婚約している。
月杜兄弟との婚約話が持ち上がったとき、美春は既に婚約していたので彼女の代わりに花澄が婚約者に選ばれたのだ。