恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
誰から聞いたわけでもないが、美織や美鈴の態度から、そのことは花澄も昔から薄々と感づいていた。
しかし、はっきりと美織の口からきいたのは初めてだ。
――――わかっていたことなのに、胸が痛い。
花澄はぐっと唇を噛みしめた。
「この縁談が上手くいけば、月杜家との強いパイプができるわ。月杜家は繊維業界ではトップの家柄ですもの、絶対にしくじるわけにはいかないのよ」
「ああ、わかってるさ。……それに、うちの花澄には美鈴ほどの器量はない。あの子にはあの子に合った相手がきっといる。上流社会で生きるより、その方が幸せだろう」
繁次はため息交じりに言う。
花澄は目を伏せ、踵を返した。
……花澄の雪也への気持ちを父は知らない。
けれど知ったところで、今の二人の会話からすると……諦めろと言われるのがオチだろう。
まさに八方塞がり、だ。