恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「知奈。私、これから生徒会だから、先に行くね」
「了解~」
花澄は手早く勉強道具をまとめ、図書室を出た。
西日が差しこむ夏の廊下は蒸し暑く、ただ歩いているだけなのに汗が出てくる。
図書室は生徒会室がある棟からは一番離れた建屋にあるので、片道5分ほどかかる。
花澄は生徒会室へ続く廊下を歩いていたが、背後に何やら気配を感じ、足を止めた。
「……?」
振り返ると、生徒だろうか、誰かがさっと廊下の角に消えたのが見えた。
……たまたまそう見えただけだろうか。
まだ頭が休みボケしているのかもしれない……。
花澄は首を傾げ、再び歩き出した。