恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
環は花澄を部屋に入れると、床に置かれた雑貨を部屋の脇に寄せ、部屋の隅に置いてあったテーブルを部屋の真中に置いた。
どうやらここで勉強しろということらしい。
花澄は畳の上に座りながら、環の部屋を見渡した。
……環の部屋に入るのは一か月ぶりくらいだ。
部屋の中は懸賞で当てた雑貨で溢れかえっているが、雑然とした中にもそれなりに秩序がある。
「……で? わからないのはどこだ?」
「あ、これなんだけどね……」
花澄がテーブルの上で英語の教科書を広げると、環もその隣に座った。
風呂上がりなのだろうか、いつもの濃密な花の香りだけではなく、爽やかな柑橘系の香りもする。
花澄は一瞬ドキッとしつつ、慌ててページを指差した。
「ここの文法なんだけどね。過去形と過去完了形が……」
「それは現在完了形だ」
「……え?」
「既に前提が違う。そこの下の一文をよく読め」