恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄が自分を男として意識していないことは、環も理解している。
少しでも意識していれば、そもそもこんな時間に来ようとは思わないだろう。
それを思うと胸が引き千切られるように痛む。
……きっと花澄にとって、自分は男ではなく家族なのだろう。
だからああまで無防備に、昔のように親しくしたいという感情を表に出すのだろう。
しかし、環にとって、花澄は……。
「花澄……」
口に出すだけで、甘く切ない想いが胸に広がる。
……いつから、こんなに好きになってしまったのか。
花澄に冷たく接するのは、そうしなければ気持ちが抑えられないからだ。
昔のように、心のままに接していたら……きっと自分は花澄の意志など顧みず、彼女の全てを手に入れようとするだろう。
――――もう、限界かもしれない。