恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
3.月杜家の御曹司
15:30。
放課後、花澄は筆記用具を片手に生徒会室へと向かっていた。
招集されるのは約2週間ぶりだ。
この時期だと、新入生向けの部活のオリエンテーション……だろうか。
久しぶりの招集に少し緊張しながら、花澄は本館3階にある生徒会室の扉を開けた。
生徒会室は10メートル四方ほどの広さで、3階の西にあるため夕方になると西日がきつい。
窓から差し込む西日に思わず目を細めた花澄に、窓際に立っていた男子生徒が声をかける。
「早いね、花澄ちゃん。まだ俺達しか来てないよ」
と、爽やかなテノールの声で言うのは……。
月杜雪也。高校三年生。
『月杜家の孫二人』の弟の方で、生徒会副会長の任に就いている。
甘く端整な顔立ちに、陶器のような肌、ふわっとした黒褐色の髪。
そして月の光を溶かしたかのような、透明感のある切れ込みの深い二重の瞳。
背も高く、シンプルなブレザーとタイがその均整のとれた体によく似合っている。
性格は明るく爽やかで、御曹司のせいか少し大人びた面もあるが、たまに冗談を言ったりするなどクラスでも生徒会でもムードメーカー的役割を果たしている。
環と同じく非常に人気があるが、雪也の場合はその柔らかな性格ゆえか、女子生徒だけではなく男子生徒からも慕われている。
まさに『正統派王子』といった感じだ。