恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
そして花澄も例に漏れず、こっそりとだが、雪也に憧れていた。
雪也の優しく気品のある眼差しを前にすると、条件反射のように胸が高鳴る。
花澄は頬を微かに染め、目を伏せた。
「でも雪くん、昼の放送だと確か三時半からって……」
「そ。達樹のクラスはまだホームルームやってたな。河原さんは保健委員の定例会が終わってから来るって言ってたから、四時過ぎになるかもしれない」
雪也は腕を組み、窓のさんに寄りかかって花澄を見る。
窓から吹き込む春風に乗って、雪也の爽やかなコロンの香りがかすかに漂ってくる。
初夏の草原を思わせるような、爽やかで清々しい香り。
ワイルドリリーをベースにしたメンズ向けの香りだと雪也は以前に言っていたが、この香りが似合うのは恐らく校内で雪也だけだろう。
花澄は内心でドギマギしながら雪也を見た。
昔から明るく朗らかで、それでいてどこか大人びた優しさを持っていた雪也。
しかし……。
「――――遅れてごめんなさい!」