恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「お待たせ。はい」
雪也は手にしていた紙カップの片方を花澄に渡した。
どうやらコーヒーのようだ。
冷えた手に、コーヒーの温かさがじわりと広がっていく。
「俺、この頃、コンビニのコーヒーをいろいろ試してるんだ」
「へぇ……」
「これまではコーヒーと言えばスタバとかタリーズだったけど、コンビニのコーヒーもそんなに悪くないよ。専門店の1/2の値段だから試しやすいしね?」
雪也は言い、少し笑ってコーヒーを一口飲んだ。
花澄もカップを傾け、コーヒーを飲んだ。
ほろ苦さと深い香りが口の中に広がっていく。
酸味は少なめで、わりと飲みやすい。
「あ、美味しい、これ……」
「良かった。……コーヒーは中毒性があるから、一度『ここ』と決めればサラリーマンとかは毎日通うようになる。コンビニとしてはそれを狙ってるんだろうな」
「なるほど……」
「コンビニがコーヒーに本腰を入れ始めたら、スタバやタリーズは戦々恐々だろうね。……って、ゴメンね、ヘンな話して」